福岡高等裁判所 昭和31年(う)1548号 判決
次に記録を調べてみると第一回の起訴状は被告人が偽造にかかる福岡県公安委員会作成名義、被交付者梅谷貞男名義の公文書たる運転免許証一通を行使した所為を、第二回の起訴状は被告人が偽造にかかる同委員会作成名義、被交付者別表一、二記載の者名義の公文書たる運転免許証計一八通を行使した所為を偽造公文書行使罪とし審判の対象となし、訴因竝罰条変更請求書は被告人が公文書たる右運転免許証一九通を偽造した所為を公文書偽造罪とし審判の対象としていることが認められる。これによれば、起訴状が審判の対象としている所為は結局公文書に対する公の信用を害する罪に外ならない所その罪の一つに当る所為が前記変更請求書で審判の対象とされていることがわかる。而して、前記認定の如く起訴状で行使されたとなされている公文書と前記変更請求書で偽造されたとされている公文書とは全く同一物であるから訴因を前記の如く偽造公文書の行使から公文書の偽造と変更することは公訴事実の同一性を害しないものと云わねばならない。してみれば原審が訴因変更を許可したのは固より当然の措置であり、尚記録を調べてみてもその点に違法あることは認められない。訴因変更手続の違法あることを前提とする無罪論は採用の限りでない。論旨は理由がない。
(裁判長裁判官 西岡稔 裁判官 後藤師郎 裁判官 中村荘十郎)